ふりかえってみれば、残念ながら、自然自生のホタルの生息数も生息場所もどんどん減少していった記録になっています。
なぜ減ったのか? 現場の状況の変化と要因を読み取っていただけるのではないかと思います。
この記録が、これからの田んぼのホタルの復活、すなわち生物多様性の復活、豊かな自然環境の保全につながれば幸い
だと思っています。
これらのデータ・資料については、概要を
「よみがえれホタルたち 〜調べ続けた15年の記録〜」(2018.12月)
にまとめました。
◆ よみがえれホタルたち(調査記録のまとめ)
稲沢市祖父江町地区内の自然自生の田んぼのホタル(ヘイケボタル)の生息箇所における調査データをまとめることができました。
当初の生息箇所125箇所における、2004(平成16)〜2016(平成28)年の調査記録です。観察数の記録とその生息場所の状況(写真と説明)を
データベースにまとめ、岐阜大学応用生物科学部の伊藤先生・院生の高橋さんのご支援で、各場所の推定生息数も算出し、調査に当たった会員の
当時のコメントとともに調査記録(冊子)をまとめました。
当会では、発足以来15年間にわたり、会員が手分けをして祖父江町地区の自然自生ホタル(ヘイケボタル)の生息地域を可能
な限り、くまなく調べ続けてきました。
そのデータは膨大なもので、まさしく会員すべての祖父江の自生ヘイケボタルへの想いの結晶であり、次世代へと引き継ぐべ
き貴重な財産と自負しています。
自生ヘイケボタルの生息数を把握するため、約125
箇所の各観測地点を設定し、シーズンには、毎夜ごと会員の足で調査を
継続してきました。地道で莫大な作業量になるのは会員全員が覚悟の上で、まずはヘイケボタルの生態・生息実態を詳しく把握
することを先決としたのです。
◆ 調査データがもたらした悲しい現実
しかし、その調査データは、毎年、私たちに残酷な現実を突きつけてきます。
この活動にあたって、会だけではなく、地域の多くのみなさんのご理解、ご協力をいただいてきました。それでも、残念ながら生息数
も生息地域も、減り続けています。
このほか、シーズンオフでの生息地域、消滅地域の水質調査等も続けてきました。
専用のデータロガー(計測・記録器)を用いて、水田の水温・気温等の終日の変化の様子・状況を長期にわたって調べあげた
データ もあります。
その調査結果の記録方式として、主な方法は以下の通りです。
・ 観測ポイントごとの生息数の推移・経年変化のグラフ化
・ 年度ごとの生息地と消滅地を地図上に精密にプロット化
・ 生息確認地点(一部除く)の気温・水温・湿度の計測生息調査
例えば、このような疑問も浮かび上がりました。
「他の地域で、同じような慣行農法の水田ではヘイケボタルが消滅してしまったのに、なぜこの稲沢市祖父江町の一部に今も自然
自生しているのか?」
※ 2010(平成22)年以降は、祖父江の自生地からも、生息数・生息場所の減少が続いています
私たちは、この長年の疑問に終止符を打つべく、2012(平成24)年より、生物多様性との共存を実現する未来型の水田「実験田プロジェクト」
を開始しました。